きょうの健康放送日3月26日では、糖尿病が進行すると、色んな合併症を起こす恐れがあります。
しかし、ほとんど進行するまで気付かないようです。
気付いたときには手遅れになるケースもあります。
糖尿病の合併症はどんなことに気をつければ良いのかを専門家の方が紹介してくれました。
こちらでは、それを簡単に紹介しています。
司会は、黒沢保裕さんと岩田まこ都さんのお2人です。
今回の専門家の方は、熊本大学大学院 教授 荒木栄一先生(専門は、糖尿病)です。
糖尿病
黒沢保裕さん「糖尿病は、色んな病気につながってしまうんですね?」
荒木栄一先生「糖尿病は血液の中のブドウ糖が多くなってそれが持続する病気です」
「従って、その影響は全身に出て参ります」
「ブドウ糖が多い状態が続きますと、全身の血管がダメージを受けてしまいます」
●では、血液中にブドウ糖が多い状態が続くと、なぜ血管にダメージが起きるのでしょうか?
・増えたブドウ糖は、血管の壁となり、内皮細胞に入り込みます。
すると、活性酸素が発生し、血管を傷つけてしまうと考えられるのです。
・さらに細胞内のたんぱく質ともブドウ糖は、くっついてしまいます。
細胞は死んでしまい、血管の機能が保てなくなってしまうと考えられています。
糖尿病の三大合併症
糖尿病には、様々な合併症があります。
認知症・脳卒中・顔面神経麻痺・網膜症・歯周病・肺炎・肺結核
狭心症・心筋梗塞・がん・腎症・壊疽・神経障害・水虫
その中の三大合併症は次の通りです。
これらが進行してしまうと、
・糖尿病神経障害⇒ 切断
・糖尿病腎症⇒ 透析
・糖尿病網膜症⇒ 失明
これらの合併症は、どれぐらいの確率で起きてしまうのでしょうか?
・糖尿病神経障害11.8%
・糖尿病腎症11.1%
・糖尿病網膜症10.6%
*平成19年度 厚生労働省の調査
糖尿病神経障害とは?
糖尿病神経障害:合併症の中で最も頻度が高く、症状も早期から現れます。
・足の指や裏のしびれ・痛み・感覚麻痺
これらの症状は、体の感覚をつかさどる、末梢神経が傷つくことで起きます。
他にも、胃のもたれ・便秘・下痢・立ちくらみなどの症状を起こすとこもあります。
黒沢保裕さん「糖尿病神経障害を進行させないようにするにはどうすれば良いのですか?」
荒木栄一先生「まず大事なのは、血糖管理:ヘモグロビンA1c=7.0%未満に保つ」
「血糖管理が良好であれば、アルドース還元酵素阻害薬など」
「危険因子:喫煙・飲酒・高血圧・脂質異常症などの管理も糖尿病神経障害の予防治療につながります」
黒沢保裕さん「糖尿病神経障害が 足などの切断につながるのはなぜですか?」
荒木栄一先生「糖尿病神経障害が起こって参りますと、」下記へ
・神経障害:足のケガに気付きにくい
高血糖:細菌感染しやすい
動脈硬化:下肢への血流が悪化する(キズが治りにくい)
これらの結果⇒壊疽(えそ)
荒木栄一先生「糖尿病や糖尿病神経障害が進行したら、水虫や深爪・靴ずれなど小さなキズでも大事に至ってしまうので、注意が必要です」
「正しい知識を持って、日頃からケアをしていただければ、必要以上に心配する必要はないと考えます」
黒沢保裕さん「糖尿病腎症とはどういう病気ですか?」
荒木栄一先生「腎臓は、体の中の老廃物・塩分・水分のバランスを整える機能を持っています」
糖尿病腎症:老廃物・塩分・水分が排出できない。たんぱく質などが尿から漏れる。
黒沢保裕さん「そうなると、具体的には、どんな症状が現れてくるんですか?」
荒木栄一先生「通常は、自覚症状がない。進行すると、だるさ・むくみ・吐き気・食欲不振などの症状が出てきます」
黒沢保裕さん「自覚症状がないということは、早期発見するためにはどうすれば良いのですか?」
荒木栄一先生「そのために、尿中アルブミン検査というのがあります」
糖尿病腎症:アルブミン(たんぱく質の一種)が早期から尿中に漏れ出てくる。
荒木栄一先生「従って、尿中アルブミン検査を行うことにって、糖尿病腎症が分かります」
荒木栄一先生「通常の健康診断では、尿タンパク検査、クレアチニン検査(血液検査)を行いますが、」
「これらの検査では、早期の糖尿病腎症を見つけることは困難な場合があります」
「従って、早期の糖尿病腎症を見つけるには、尿中アルブミン検査が必要と言うことになります」
黒沢保裕さん「糖尿病腎症に鳴らないためには、どんなことに気をつければ良いですか?」
荒木栄一先生「糖尿病腎症の予防は、糖尿病や糖尿病神経障害と同じく血糖管理:ヘモグロビンA1c=7.0%未満を目標として治療を行います」
「また、血圧の管理も130/80mmHg未満に管理していきます」
「食事療法で、食塩1日6g未満、進行したら、たんぱく質・カリウム制限も行います」
岩田まこ都さん「薬でも糖尿病腎症の進行を抑えられるんですか?」
荒木栄一先生「はい、そのひとつが、SGLT2阻害薬です」
SGLT2阻害薬:
・ブドウ糖を尿中に排泄する。
・糸球体の過剰な負担を軽減する。
そのために糖尿病腎症の抑制効果がある。
荒木栄一先生「また、GLP-1(受容体作動薬)という薬もあり、」
「受容体作動薬は、膵臓に作用して、膵臓からのインスリン分泌を助ける薬です。こちらも糖尿病腎症の進行を抑えます」
黒沢保裕さん「糖尿病網膜症はどうしておこるんですか?」
荒木栄一先生「糖尿病網膜症は、目の奥にある網膜の血管に障害が起こってくることによって起きます」
「網膜は、視神経や血管と細かいネットワークを作っています」
糖尿病網膜症:血管の閉塞⇒ 血管をバイパスするため新生血管ができます。
新生血管は、もろくて破れやすい、出血で視力の低下・失明につながります。
黒沢保裕さん「糖尿病網膜症の初期の段階では、自覚症状はないんですか?」
荒木栄一先生「実はですね。進行するまで、症状がない場合が多いのが特徴的です」
「かなり進行するまで症状はありません。従って、ものが見えにくいといった症状があれば、網膜症がある程度進行しているという風に考えられます」
黒沢保裕さん「糖尿病網膜症を進行させないためには、どうすれば良いですか?」
荒木栄一先生:
・血糖管理:ヘモグロビンA1c=7.0%未満の維持。
糖尿病網膜症が進行したら、
・光凝固療法(レーザー治療)
・手術
・薬(抗VEGF抗体など)の新しい治療もある。
認知症とがん
黒沢保裕さん「様々な合併症の中には、認知症とがんもあるんですね」
荒木栄一先生「糖尿病になると、認知症やがんを起こしやすいということも最近注目されています」
・認知症:(アルツハイマー型)は糖尿病でない方の=2.1倍という報告があります。
また、脳血管障害による認知症も起こしやすいと報告されています。
そして、がんもそうでない方に対して
・肝臓:2.0倍
・膵臓:1.9倍
・大腸:1.4倍
起こしやすいので、認知症やがんの検査を定期的に受けることが重要です。
荒木栄一先生「糖尿病治療の最も大事な点は、いかにして合併症を防ぐかという点です」
「合併症を防ぐために、ヘモグロビンA1c=7.0%未満の目標を達成することです」
まとめ
●糖尿病
・糖尿病は血液の中のブドウ糖が多くなり、それが持続する病気
そのため、その影響は全身に出る
血管の機能が保てなくなってしまうと考えらる
●糖尿病の三大合併症
・糖尿病神経障害⇒ 切断
・糖尿病腎症⇒ 透析
・糖尿病網膜症⇒ 失明
糖尿病の合併症を防ぐために自覚症状がないものもありますので、定期的に検査を受ける事が大事です。
最後までありがとうございました。